過活動膀胱
目次
過活動膀胱とは~バス旅行での悩みの種~
バス旅行をするとき,まずトイレの場所や,パーキングに何時間でとまるかなど楽しい旅行そっちのけで,トイレのことばかり気になってしまうという経験がおありじゃないでしょうか。
バスの絵 過活動膀胱は、我慢出来ないような強い尿意を感じ,頻尿を主に主訴とする病気です。正常な膀胱は脳からの命によってコントロールされていますが、過活動膀胱では膀胱がコントロールを失い、少しの尿で膀胱が収縮して、尿が我慢出来なくなります。
過活動膀胱の原因
脳の神経(脳梗塞,認知症,パーキンソン病など)の病気や、脊髄の神経(脊柱菅狭窄症,椎間板ヘルニアなど)の病気があります。自律神経にも関与しており,自律神経失調症でも引き起こすことがあります。
また前立腺肥大症(肥大のページに飛ぶように)に合併したり、年をとることで膀胱機能の変化や、明らかな原因疾患がない特発性場合もあります。
過活動膀胱の検査
- 尿検査
- 超音波検査
上記検査で膀胱炎や尿路結石、前立腺肥大症、がんなどの膀胱の特殊な病気の存在が除外されれば、過活動膀胱と診断します。
過活動膀胱症状質問票
過活動膀胱の診断や重症度を評価します。
質問3の点数が2点以上で、全質問の総合点数が3点以上で
過活動膀胱の診断となります。
総合点数 5点以下 軽症6―11点 中等症12点以上 重症判定となります。
下記スコアシート参照
治療
1. 薬物療法
(1)抗コリン薬
膀胱の収縮を抑えて、尿意切迫感を改善します。膀胱の筋肉をゆるめ、膀胱の過度なを抑えて、尿を溜められるように膀胱が広がります。
副作用;副交感神経を抑えるため①便秘になったり②のどが渇きやすくなったりすることがあります。
※閉塞隅角緑内症の方には使用できません。
(2)β3受容体作動薬
尿意切迫感も改善します。抗コリン薬と効果はだいたい同じですが,膀胱に選択的に作用するため,抗コリン薬の副作用がでにくいのが特徴です。
2. 行動療法
(1)生活指導
- 過剰な水分を控える
- カフェインの摂取を控える
- 少し早めにトイレに行く
- 予めトイレの場所を確認しておく
- 時間に余裕を持って行動する
- トイレをしやすい服にする
他にもまだまだありますが,クリニックで先生と相談しましょう。
生活習慣,環境の整理をおすすめします。
(2)膀胱訓練
膀胱訓練は少しずつ排尿間隔を延長することにより膀胱容量を増加させる訓練法です。具体的な方法としては、まず日記をつけて自分の尿量,回数を知り、排尿計画を立てます。リスクとして膀胱に尿をためすぎて膀胱炎になりやすいので,医師と相談の上,治療計画をたてましょう。
(3)骨盤底筋体操
骨盤底の筋肉を鍛える体操でお尻の穴を閉める体操です。
イメージはおならをがまんするイメージでよいかと思います。
マンツーマンで骨盤底筋体操の指導を行い、正しい収縮を身につけて頂きます。
3. 手術療法
上記のことをしてそれでも良くならないときに検討します。
(1)ボツリヌス療法
膀胱の筋肉を緩める薬(A型ボツリヌストキシン)を膀胱内に注射する治療です。米国や欧州など世界で広く行われている治療で、日本では国内の治験を経て2020年4月に健康保険が適応となりました。。
(2)仙骨神経刺激療法(SNM)
電極を埋め込み、会陰部や骨盤を支配する仙骨神経に電気刺激を行う治療です。2017年9月から保険適応になりました。